2016-02-28

決勝を控えジェラードが言いたいこと


ユルゲン・クロップならリバプールを勝者にしてくれる。彼はキャピタルワンカップ決勝の舞台でそのチャンスを掴めと選手に求めるだろう。


By Steven Gerrard, Former Liverpool and England captain
Telegraph Sports寄稿記事)


ウェンブリーの決勝直前のドレッシングルームでは、リバプールのキャプテンとしてゲームプランを復習する。勝てる力があるのはわかっている。どんなチームにも勝てる力を持つチームメイトたちがいる。でもひとつ、ピッチに出て試合の大きさを実感したときに自分やチームメイトたちがどういう反応をするかはわからない。スキルやゲームプランをきっちり試合で出すのは大事なことだが、一番重要なのは感情面をコントロールすることだ。

カップ戦決勝での選手にとって最も大きなチャレンジは、クラブサッカーで最も大きな舞台でプレーするというモチベーションを駆使しながらも、そのモチベーションが自分のパフォーマンスを台無しにしてしまわないようにすることだ。こういう試合前はいつもの試合前とは違う。睡眠パターンが変わる。圧倒的な興奮に襲われる。監督、選手、スタッフ、ファンらクラブの関係者全員がどれほどこのタイトルを望んでいるかということを考える。クラブの歴史や優勝すれば短期的、長期的にどうクラブを変えるかということを何度も言われる。新監督のもとでの初タイトルとなれば、それが新時代の幕開けを示すものになるかもしれないと言われる。そういうことがさらに試合を大きくする。リーグでは大一番が何度かあるが、ウェンブリーの決勝で感じるものはそういう試合とは全く違う。

Gerrard lifted the League Cup trophy as the captain in 2012
プレミアリーグのポイントとトロフィーを懸けて戦う試合の違いは、キャリアを定義するものになるかどうかだ。リーグでマンチェスターシティに負けても誰の夢を壊すことにもならない。次にその埋め合わせができる試合がある。決勝はその夢の達成感を与えてくれるものだ。

決勝で勝利すればとてつもないプレッシャーから解放される。カップ戦で優勝すれば、安堵感と達成感両方がある。負けた時は数週間そのムードを引きずってしまったりするからだ。試合が終われば誰が2位になったかなんて誰も気にしない。それがリバプール対マンチェスターシティともなればなおさらだ。

俺自身がメンタル的にもフィジカル的にも完璧に準備が整っていると感じながら、チームが試合で固まってしまったというビッグゲームがいくつかある。昨シーズンのFAカップアストン・ヴィラ戦がその例だ。ヴィラとは別の会場で何度も対戦していたから、リラックスして楽に勝てるだろうと思っていた。ウェンブリーの試合では、待ちすぎた感があったし、個々の対決で散々破れ、負けてしまった。あれはもしかしたら前シーズンのリーグ優勝に迫り、あまりにタイトルが欲しいためにチームのレベルにほど遠いレベルに達したシーズンの傷跡だったのかもしれない。アドレナリンが間違った方向へ行き、判断を誤った。ブレンダン・ロジャーズは勝つための正しいゲームプランを準備していたのに、チームがその指示を実行できなかった。選手たちが戦術でも技術面でも仕事をするのを忘れてしまった。

あのときいた多くの選手が今回のシティ戦の一員となるからには、あのときできなかったことをしっかり実行する必要がある。俺は彼らにはできると信じている。さらに今のチームは大きな違いをもたらすさらなる要素がある。ユルゲン・クロップだ。俺が実際優勝した試合準備では監督の存在が極めて重要だったと思う。ジェラール・ウリエやフィル・トンプソンはアプローチではきめ細かかったし、トンプソンは自身の優勝経験や大舞台での経験から、気をぬかぬよう細かい指導をしてくれた。

UEFAカップとラ・リーガを制したラファ・ベニテス就任したときは、彼なら大丈夫だという信頼があった。大事にしている父親のヒーローであるケニー・ダルグリッシュと勝ち獲った2012年のリーグカップ優勝がキャリア最後のリーグメダルとなった。01年のリーグカップ決勝時のウリエ、05年のチャンピオンズリーグ決勝時のベニテス、2012年決勝時のケニー、どの試合も彼らのメッセージは同じだった。『後悔をドレッシングルームに持って帰ってくるな。』

Devastated after defeat to Aston Villa at Wembley last season
キャプテンとしても同じことを言っていた。カップを掲げることだけを考えた。決勝への道は成功へ繋がるものではない。優勝してこそ成功への道が開ける。それがウェンブリーの雰囲気と試合を楽しむ選手と'勝者'の分かれ道だ。定期的にトロフィーを獲得する監督や選手たちは、試合の会場やセレモニーを心待ちにしたりしない。彼らは勝ち獲れるトロフィーがあることを楽しみにしている。勝利がすべてだ。

決勝に辿り着いたことを素晴らしい功績だと考えているような選手は、すでに半分負けたようなものだ。リバプールのようなクラブでは決勝にたどり着くことが功績になったりしない。優勝してこそ価値がある。クラブによって標準は違う。マンチェスター・シティが優勝という言葉に慣れてきたのは近年。クロップ率いる自分の古巣をみていて、'勝者'を迎えたとはっきり言える。彼は試合前の会見やウェンブリー、決勝での着用スーツなど大会の伝統を気にする人じゃない。彼は、ウリエ、ベニテス、ダルグリッシュと同様、トロフィーをアンフィールドに持ち帰ることに固執している。

クロップのもとでプレーするリバプールの選手たちは、彼こそチームを今後多くのトロフィーへと導いてくれる監督だと信じてやっているはずだ。クロップには存在感がある。クリスマスの時期に合同練習をしたとき、彼には特別なオーラを感じた。彼の選手へのメッセージは選手たちを奮起させる。誠実で品格があり、自分の考えを選手たちにしっかり伝える。世間は公での彼のおどけた面を見ているが、彼には芯がある。もっと若い自分がいれば、毎日彼のそういう部分をみていたかった。

ウェンブリーの試合前のクロップの最も大きな仕事は、チームが雰囲気とプレッシャーに押しつぶされないようにすることだ。とはいえ自分の経験から言って、監督にできることは限られている。ラインを越えれば監督のプランを実行できるかどうかは選手にかかっている。プレミアリーグでのシティ戦でリバプールのみせた試合を振り返ると、どういうプランかはなんとなく見えている。クロップは'ヘビーメタル'アプローチで、選手たちにハードにプレスすること、これまで以上にハードワークすることを求めるはずだ。

シティと決勝で対決するのは良い時にやってきたと思う。決勝でシティを倒すには最高のチャンスじゃないだろうか。シティは夏に再び多額を投じて補強し、新しい監督が来れば、すべてが変わる。ペップ・グアルディオラはチームに新たな息を吹き込み、さらにレベルアップさせることだろう。リバプールは今このチャンスを掴むほかにないと感じている。シティの選手たちはすでにグアルディオラの影を感じプレーする。彼この試合をみて、来季のプランに入れるかどうかをジャッジするとわかっているし、自分の未来のためにプレーする。大富豪が買い取ってからのシティはワールドクラスの選手を集めているが、グアルディオラがくれば、チームとして変わると思う。

ここ数年、シティをみていて個々のタレントが揃った良いチームだと感じてきた。調子のいい時の彼らは誰にも手に負えない。ただ彼らには必殺のプレーパターンがないし、一流のチームが持つアイデンティとなるフォーメーションというのをみたことがない。戦術が完璧な相手が立ちはだかった時彼らは苦しむ。グアルディオラはそういうところを変えるだろう。セルヒオ・アグエロやダヴィド・シルバ、ヤヤ・トゥーレの能力に頼るのではなく、戦術的に、試合のあらゆる面でピースを繋いで試合に勝てるチームに成長させる。さらに柔軟で、試合中に問題が起きても対応できるしっかりしたユニットになる。いいチームから完璧なチームへと変貌させることだろう。

キエフでシティの能力はみえた。選手たちにマヌエル・ペレグリーニに対する気持ちがあるなら、いくつかタイトルを獲得し、彼を送り出したいと思っていることだろう。仕事は終わっていない。セルヒオ・アグエロ、ラヒーム・スターリング、ダヴィド・シルバ、ヤヤ・トゥーレは試合の勝ち方を知っている勝者だ。リバプールが彼らを黙らせられるか、クロップのプランを実行できるかで勝敗が決まる。

その方法はエティハドで勝った時の3アタッカーでの動き、MFの走行を再現することだ。シティの守備を壊せる選手はいる。ロベルト・フィルミーノ、フィリペ・コウチーニョ、ダニエル・スタリッジは相手にダメージを与えられる選手だ。シティの弱点はディフェンスだ。ヴィンセント・カムパニが100%でなかったり、ジョー・ハートが選ばれずウィルフレード・カバジェロが出るとなればなおさらだ。もしそうなればこの機会の大きさを考えるともとんでもない決断だと思う。試合を決定づける要因になるかもしれない。リバプールの強みはフォワード選手たちのエネルギーであり、リーグ対決では彼らが相手の隙を突くプレーをした。

チームと一緒に出たいと願う自分がいるのは否定できない。アメリカのテレビでリバプールを見るなんて変な気分になるだろう。リバプールの話をすると、今でも"We"と言ってしまう自分がいる。前のチームメイトたちやメルウッドの友人の多くとコンスタントに連絡を取っている。なかでもとにかくジョーダン・ヘンダーソンに次のトロフィーを掲げて欲しい。ジョーダンがどれほど値するかは伝えきれないほどだ。


サッカーの世界では妥当な評価や価値を与えられないことがある。プロとしてこれ以上ないほど献身し、トレーニングでは始まりから何か学ぼうと必死で、最高の自分になろうと努力する選手たちに対してだ。ジョーダンは選手全員にとって手本となる選手。リバプールに加入した頃彼は苦しい時があったが、それを乗り越えキャプテンに任命された。彼のキャプテンとしての力はシーズン当初の負傷にも邪魔されなかった。

リバプールサポーターには彼がどれほど辛い想いをしたのか評価してあげてほしい。彼はリバプールのユニフォームを着るために毎週痛みをこらえながらでもプレーしようという選手だ。たとえ100%でなくともピッチに出て体を張り、全力を尽くす。俺はリバプールに彼のような選手が11人欲しい。もしジョーダンがリバプールのトロフィーを掲げる次のキャプテンになってくれたら俺は本当に誇りに思うし、誰よりも早く祝福メールを送る。

俺はこの試合を観戦できるように調整してくれたブルース・アリーナ監督に感謝しなければいけない。リバプールの決勝進出が決まった時、俺はすぐに試合日程をみて、ウェンブリーに行けないかどうかをチェックした。それどころかメキシコで行われるCONCACAFチャンピオンズリーグのサントス・ラグーナ戦のセカンドレグが控えていた。ブルースにキックオフの時間を伝えたら、彼は練習とメキシコからの帰りのフライトをずらして、俺がリバプールの決勝を逃さないようにしてくれた。

今季のほかの試合と同じく、リバプールの試合を見ながら自分もボールを一緒に蹴ってるような気分になってるだろう。自分もプレーしているような気分で。選手たちが初めてのメダルにハングリーであることは知っている。もし今回優勝できたら、彼らはもっと欲しいとさらにハングリーになる。




2 件のコメント:

Hayato さんのコメント...

ジェラードがどこに居てもLFCの一員として発言してくれているのは嬉しい限りですね!
ギャラクシーの監督には感謝です!

江波戸雄一 さんのコメント...

長文の和訳ありがとうございます。
ツイッターもフォローさせてもらいました。
これからもレッズ情報の配信お願いします。
あと恐らくジェラードのレビューも出てくるかと思いますが、そちらの和訳もお願いします。